古い絵葉書を元に作られたイタリアの絵葉書


勤務先のビルにある音楽グッズの店で珍しい絵葉書を手に入れた。

古い絵葉書をそのまま撮影(物撮り)して新たに絵葉書にした点がおそらく珍しい。その経緯を隠さない意図から?、撮影時にオリジナルの絵葉書を置いた絵のキャンバス風の布目が新たな絵葉書の背景として使われている。

オリジナルの方の絵葉書は、白縁付きで露光した印画紙をそのまま絵葉書にしてある。その証拠に画像の四辺は次第に銀粒子のものらしき金属光沢が浮き出はじめている。

写真の題材は製作中の楽器職人の姿。同じ体裁の絵葉書にストラディバイウス本人を描いたと思われる油彩画を使ったものがあることから、楽器の歴史にまつわる事柄を扱った絵葉書シリーズだと思われる。この職人は必ずしも裕福そうには見えないが、このように絵葉書にされるくらいだから、優れた職人だったに違いない。

新たに作られた絵葉書の制作年は2003年(2003-Edizioni Novecento - Foto: Memo Zinni と記されている)。撮影者の名は“メモ”、ペンネームだろうか。

オリジナルの絵葉書の制作年は1937年らしい(DARIO VETTORI 1937 Casanova, Firenze と記されている)。DARIO VETTORI はこの楽器職人の名だろう。撮影者の名は記されていない。

これは絵葉書にも関わらずスナップ写真的なので見ていて楽しい。
先ず、職人の職場が自宅の屋外だという点がほほえましい。
本人は逆光の太陽光線がまぶしいようだ。
父親の足元には娘がヴィオラ?の背板を持って写っていて、テーブルには製作用の工具の他に、飲みかけの赤ワインが載っている。

一番傑作なのは手前に写り込んでいる撮影者の頭の影で、この影の形から、撮影したのは職人の妻であるらしいとまで想像できてしまう。撮影当時は彼は未だそれほど評価されていなかったのかも知れない。